今日は、主に教室でのシーンを撮る。




あのアドリブ以降は、全て台本通りに進んでいる。




「カット!よし、じゃあ少し休憩入れて、美琴と玲のキスシーン前から始めよう」





少しだけ、肩が震える。




「千代、緊張するな。好意的にするんじゃない。玲が美琴の不意をつく。だから、あまり変に意識をしないほうがいい」




「そう……だよね」




まだ、撮影が始まるまで少しの時間がある。




「………はぁ」




台本を幾ら読み返しても、それが書き変わることはない。





「一発OKが貰えるように、シュミレーションをしよう。俺がこう、腕を引いて___」




「うん」



「で……する。いいな?」




「……分かった。ありがとう」






「っ……千代、ちょっと来て」




「え?」




流くんと、例のシーンを練習していると、急に悠太に手を引かれた。




「ねぇ、どこに行くの?もうすぐ撮影始まるよ」




物陰に連れていかれると、ようやく手を離してくれた。




「っごめん。でも……もう、我慢出来ない。仕事だってことは分かってる。でも、こんなことで千代の初めてが奪われるなら___」





「え……」




両手が塞がる。





「_____僕が先に奪う」