「暑い……てか圭くん、なんでここにいるの」




「いや、悠太こそ……あー、マジ暑いな。クーラー壊れてるとか、マジないわ」




クーラーの壊れた蒸し暑い部屋で、椅子に座って伸びている2人。




「今日って、僕達だけ?」




「さあ。……そういや、先月のセカンドシングル発売記念のライブ、結局千代ちゃんは来れなかったな」




「毎日忙しそうにしてるからね。放課後はいつも予定があるからって、千代の家にはあがらせてもらえなかったし。でも、最近知ったんだけど、演技のレッスンに通ってるらしいんだよね」




「ドラマの為ってことか……」




「そうみたい。そのおかげで、ドラマ撮影以外で、全然千代と会えなくてさ」




「ご愁傷様ー」




「適当な返事だなぁ」




「暑さで上手く思考回路が回らないんだよ」



「へー、そう」




「千代ちゃんって、キスとかしたことあるの?」




「へ!?な、な、ないと思う……」



「……もしさ、このまま千代ちゃんが有名になって、『キスシーン』とかやることになったらどうするつもり?」




「キスシーン……だよね。そういうこともある……か。どうすればいいんだろ」




「まあ、仕事のだからって割り切れればいいけどさ、お前じゃそうはいかないなよな。てか、早く気持ち伝えろよ」




「はぁ……そもそも、あの誕生日の日、僕の気持ち伝えようと思ったのにさ」




「あー、あんときか。千代ちゃん寝ちゃってたもんな。あれはマジでドンマイだわ」





「どんなタイミングで言えばいいんだろう。でも、流石にあのドラマの撮影終えてからの方が良い気がする。振られて気まずくなったら、元もこもないよ」





「そ。なら、そうしなよ。俺はなー、どうしよっかな」




「え、圭くん……?」




「んー?いや、なんでもない。あ、誰か来た」






コンコンコンと、ノックの音が聞こえ、圭くんは立ち上がり、ドアに向かった。