扇たちとの試合が終わって1年がたった。
陰たちは各班の勉強をしながらも実行班での任務も行っていた。

『こちら、殺...ここはどこか分かる?』

『楓です。...おそらく殺がいる場所は中心から3時の方向です。

距離は分かりませんがそう遠くないと思います。』

殺と楓の会話を聞きながら陰と陽はお互い顔を見ては頷いた。

『こちら、陽。
陰と合流に成功、配置についたよ。』

陽はできるだけ声を出さずに言った。

陰たちがいるのはクーイ国の南にあたる港町だった。

ここには、名の知れた犯罪集団がいる。
名前は、ブラックムーン

クーイ国を中心に光国、アルテーナ諸国周辺を活動範囲としている。

本拠地があるのは、今いるクーイ国の南にあるサフリティという町。

数ヶ月前に扇と獄、あと2人が光国の裏部隊に忍び込んでいたメンバーを捕え、次元監獄に入所したという。

そのメンバー数人からこの本拠地を見つけたということだ。

『了解...全員配置に着きました...

隊長より通達...標的に囚われた者が2人いるようなので救出を...

殺、蝶が担当してください。
私たちより少し年上の少女です。』

『『了解』』

殺は頷き、近くにいた蝶に手で合図をした。
それを、受け取った蝶も手で合図を送る。

『それじゃ、作戦開始!』

陽の声に全員が一斉に動いた。
今回は、扇たちを抜いた陽、陰、殺、蝶、楓、薬の6人での実行だ。

扇たちは、遠くでこちらの様子を見ている。
いつまでも、扇たちに頼っては居られない。
難易度が低いものは極力頼らないようにしている陽たちは、今回の作戦を買ってでたのだ。

「...よし。」

陰と陽は監視していた男2人の背後をとり、静かに首筋を小刀で切る。

「...!」

男たちは、声が出ないまま倒れ永遠の眠りについた。

陽はそれを確認して殺たちを建物の中に入れさせる。

『その部屋を左にそして階段を降りて地下2階の手前の建物に少女2人いるはずです。』

『こちら薬...救出したら直ぐにこっちに来て』

殺は小さく 了解 と呟き蝶と一緒にその部屋に向かった。

『こちら陽...陰とこのまま任務続行する。
救出完了しだい、殺と蝶は合流...

そうだな、1階奥集合で』

陽はそれだけを言って、走り出した。
陰は静かに身体中に魔力を巡らせる。

「陰、お願い。」
「ん...」

陰は一呼吸を置いて、人を避ける魔法を発動させる。

扉をそっと開き中を覗き込む。
その先には男たちが酒を飲み、騒いでいた。

その近くには、数人の死体らしき人間が倒れていた。

「なんだ...死人?」
「......」

陽と陰はお互い首を傾げた。

『いえ...恐らくまだ生きています...
しかし、鼓動が微弱すぎる...』

「死にかけ...」

陰は納得し呟いた。
楓は、風の微弱な揺れでその死体じめた人間の鼓動を感知したのだろう。

風というより音...つまり周波だろう。

「あれって...標的...ではないよね」

ブラックムーンは右腕に黒い月の刺青をしている。

たおれてい倒れている人間は全員腕に刺青は無くメンバーではないと直ぐにわかった。

『こちら、殺...救出に成功。
今からそっちに合流するよ。』

陽が様子見をしていると、無線から殺の声がした。
了解 と返し来るのを待っていた。

『おまたせ』

と、手で合図してきた蝶に頷いて返す陽は扉の先を見せる。

もちろん、殺と蝶にも人避けの魔法を掛けてあるため簡単には見つからない。

状況を把握した2人は、陽の指示を待った。
この中で班長として命令できるのは陽であるからだ。

『ここからは2手に別れる...
殺と蝶はこのまま派手に入って囮
僕と陰は奥に行って後ろから奇襲...いい?』

陽の命令に全員が頷いた。
いきなり、敵の前に現れるなんて無謀にも程があるが殺と喋だからなせる技だ。

「いくよ...1、2、3!」

陽と陰が扉を勢いよく開ける。
それと同時に陰と陽は奥に向かって走った。

誰1人、殺と蝶以外に気がついていなかった。