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(陽と陰…厄介だなぁ)
影の腕に捕まれたままの扇は状況を把握する。
扇の前には陰と陽、獄は殺と対戦中。
そして、扇は身動きが取れない状態だ。
「いや〜、やっぱり強いね」
扇は心の底からそう思った。
今までこんな強敵はいなかった扇たちにとって久しぶりに楽しめる闘いだ。
しかも、自分たちより6歲離れたまだ小学生にだ。
と、いっても扇たちも本来なら小学6年生、3年生あたりのガキに過ぎないのだがそこは実力次第で変わる。
「……」
扇の急の微笑を見た陰と陽は逆に警戒を強めた。
何となく分かるのだ、目の前にいる人は自分たちで何とかなる人ではない。
だか、だからといって逃げるわけにも行かない。
もしこれが命に関わる戦いだったら逃げれば後から突き刺さり終わりだ。
これはその生死をギリギリまで再現された試合なのでやはり逃げるわけには行かない。
「獄は殺と相性が悪いからなぁ…ちょっと本気出すか」
そう言った瞬間だ。
影の腕が一瞬にして消えた…いや破壊された。
陰と陽は驚く。この破壊が魔法ではなく魔力だけで行ったことにだ。
「っ…シャドウプリズン!」
陰は扇の周りに影の檻を作った。
本来のシャドウプリズンは監獄と言う大きな建物になり、大人数の相手に使うものである。
陰はその監獄を1人分に変化させたものだ。
これには緻密な魔力創作が必要だ。
(この年でここまでするとは…だけど…ね)
扇も驚きを隠せないが今はあることに集中する。
(土土ちゃん聞こえる?)
『 はい。聞こえてますよ』
扇は頭の中で問いかける。
問に答えたのは扇の禁級契約武器であり土属性の最高位である武器だった。
(力を貸してくれる?)
『 ええ。もちろんですよ。私は何のためにいると思ってるのですか』
若干怒り気味に言った女性の声の主に扇は苦笑した。
「そうだね…
世界を創る土の祖よ
母なる大地を統べし、
大地を創るその全ての土をここに
全土の土土 (ぜんどのとど)」
扇が召喚したのは土属性最高位の禁級契約武器だった。
扇面は地(下)は茶色で天(上)に向かって橙色になっていく。
そして、要部分から飾りのように紐が垂れておりその先には鈴がついていた。
全風の風風と同じ形であった。
「地中人倫 (ちちゅうじんりん)」
扇は全土の土土(扇子)を下から上に振り上げる。
すると、ゴゴゴ と地面が揺れた。
屋内のフィールドであるため、地面は土ではなくコンクリート。
「何が起きるんだ…」
陽は地面の揺れが気になって仕方がない。
地面が揺れるだけで何も現れないからだ。
ふふ と笑う扇の周りには茶色の魔法陣がいくつも現れた。
「なっなに…」
陰は影魔法で、影の手を作る。
何かあった場合にガードができるようにだ。
「…手?」
陰は魔法陣から出てきた2本の手が気になった。
「行け!」
扇の合図でその手は陰と陽に向かって伸びてきた。
「…!!!!」
陰と陽は声にならない悲鳴をあげながらもその手から避ける。
「通電!」
「流閃!」
陰は雷属性、陽は光属性の魔法で伸びてきた手を壊していく。
やっと、全ての手を消し、扇を見るといつの間に召喚したのか黄色の扇子を持っていた。
「えっ!あれは全雷の雷鳴(ぜんらいのらいめい)!」
陰と陽は やばい と思いそれぞれ武器を召喚する。
「鳴り響け!…雷鳴! (らいめい)」
扇はいつもより大きな声でそう詠唱した。


