陰陽 ~正反対の少女と少年~


「龍仙火 (りゅうせんか)」

獄の一瞬の隙をついて火の龍を作る。
だが、獄は余裕の表情だった。

「龍仙火!」

陽と同じ魔法を使う。
2つの龍がぶつかり合ったが陽の龍は呆気なく獄の龍が飲み込んでしまった。

(こっちでもダメなのか)

目の前の実力の差を見せられ陽は焦りを見せる。
同じ魔法なのに一瞬にして飲み込まれたのだ誰だって焦りは見せるだろう。

「破壊の呪い……パリダ」

陽の動揺の隙をついて呪いを発動する。
焦りからか魔法がいいように発動しなかった陽は ここまでか と目を瞑った。

「強制削除!」

殺のこの言葉で陽は驚き目を開く。
制服のあちこちに穴があき、ボロボロであった。

「まさか……周は!」

扇はリタイアした楓達がいる場所を見た。

殺よりもボロボロの蝶と未だ意識がなく蝶よりもボロボロの周がいた。

「えらいボロボロやなぁ」

蜘夜は隣にいる蝶と周を見て引き気味だ。

「ちょっとまって!なんでこんなにボロボロなの!」

扇も例外なく引いていた。
それに蝶は苦笑い、殺はため息をついた。

「いや〜楽しくてやりすぎちゃいました!」

アハっ と手を頭にあてる。
殺は まったく… とまたため息をついた。

何回も言うが蝶は闘い好きなのである。

「これからは蝶を監視しないとだな…」

流石に獄も警戒した。
そして、試合は再開された。

今現在、残っているのは扇、獄、陰、陽、殺の5人。

「この人は私がやるから陰のところへ」

殺は鮮血色の魔法陣を浮かび上がらせた。
よく見ると魔法陣の中心には六芒星が描かれていた。

「分かった!」

陽は頷いて陰を援護すべく走り出した。
獄は陽を無視して殺をまっすぐ見ていた。

(俺の呪いを消し去った……
それにあの魔法陣…呪いを持つ者の魔法陣だ)

つまり、殺は呪いが使える… そう結論づけた獄はまた呪いを発動してみた。

「消滅の呪い……ペテベルタ」

獄は殺を指差した。
すると殺は魔法も呪いも使わず左手を避けるように右側に向ける。

(っ……!!見破られた)

獄は殺の左手を狙って呪いをかけたのだ。
呪いで相殺するかと思っていた獄にとって想定外なことがおこった。

「縛りの呪い」

殺は獄をまっすぐ見る。
本来、呪い使いは人体に呪いをかける場合何かしらのポーズをとる。

獄の人を指す方向へと呪いをかけることがその例だ。

殺はそれを瞬時に理解し読み取ったのだろう。
そして、殺の縛りの呪いは自分の目を相手に合わせること。

指で指すことをできるが、面と向かって対峙している時はこっちの方が効果が上がる。

「なっ…」

獄はそれに気づくのに時間がかかった。
そのため、まんまと金縛りのように動けなくなった。

「……たく、おせえよ」

獄は殺の実力に驚いたがまたニヤリと笑った。
そして、呟いた時に殺は気がついた。


後ろに得体の知れない何かが立っていたこと
そして、陰と陽が倒れていたことに。