「月の光をもち、我の力となる弓よ、
月の光のもと その静かな光を世に射て
月夜の月光弓 」
陰は月夜の月光弓を召喚し、手に持つ。
月夜の月光弓の光は神々しくはないが、静かな光を帯びている。
「……あれできるかな。」
陰は月夜の月光弓を見つめながら言った。
それを聞き取った陽は首をかしげた。
「あれって?」
「……月宮が昔いた国……影国の月の貴族・一族が使う……魔法?」
最後が疑問形だったため、陽たちは落胆する。
「なんで、そこで疑問形になるかな」
薬が クスッ と笑いなら言った。
それに陰は ふいっ とそっぽを向く。
「……もしかして、千月矢 (せんげつや) ?」
殺は心当たりがあったらしく、陰に問いかける。
すると、陰は コク と頷いた。
「千月矢……ですか?」
聞きなれない言葉に陽も楓も薬も首をかしげることしかできない。
「そう。今はない影国にある月の名をもつ貴族と一族が使う秘術で……」
殺は陰のかわりに話し出した。
千月矢とは、月の名を(名字)もつ貴族と一族は昔から弓を鍛練するのが普通であり、
弓を使いこなせるからこそ、使えるものである。
だが、千月矢を使えるのは月の貴族・一族の中でも極わずかしかいない。
「じゃあ、陰はそれを使えるの?」
蝶は興味津々に聞く。
陰はまた、コク とうなずいた。
「……まだ使えないパターンもあるけど初級は使える。」
千月矢は様々なパターンがあり、その数は計り知れない。
自分だけのパターンも作れる。
「へぇーー。すごいねー!」
陽は ニコッ と笑顔で言った。
「時間もあまりないんだから、始めるよ」
薬が間に入り言った。
それに、殺、蝶、陰、陽、楓が頷いた。


