「ああいうの好き?」
「好き。数えるほどしか行ったことないけど、まさに夢の国って感じじゃない? 現実を忘れられるっていうか」
「俺も好きだよ。何もかもがキラキラしてて、雰囲気味わうだけで楽しいよね」
……ちょっと待って。それって、誰と行ったときの話をしてるの。
なんて、そんな子供みたいなことを気にしちゃダメだよね。
「一緒に行きたいね」
悠と一緒なら、きっとすごく楽しい一日になるだろう。
キャラクターがついた帽子とかサングラスを一緒につけて、バカ高いポップコーンバケットを首から提げるの。
彼と一緒なら長いアトラクションを待つ列に並ぶのも、きっと苦にならない。
バカみたいにはしゃいで、夜になったらプロジェクションマッピングや花火を見て、一緒に感動するの。
「うん。きっといつか行こう」
その言葉に、現実に引き戻される。
そうだった。私たち、今逃亡中だった。
私がいないことがわかれば、SPたちは慌てて私を探すだろう。父や篤志さんにも連絡が行くかもしれない。