頭に鈍い痛みを感じ、私は顔を上げた。


私に教科書丸めて頭叩いてくる、そんな無礼なヤツなんて一人しかいない。


「でけぇ声出して、なに話してんだよ」


無駄に身長が高いこの男は、山本達郎(やまもとたつろう)。


なぜか私に無駄絡みしてくる数少ない私の男友達だ。


いつもなら「禿げるからやめろ!」と鋭い眼力で睨み返しているところだけれど。


「ふっ、リア充の私に気軽に話しかけないでくれるかな」


今日の私はそんな小さなことは気にしない心が広い人間へと成長を遂げていた。


「は?何言ってんの?ついに頭がおかしくなったか」


「いや、マジらしいよ。卒業までの5日間、例の先輩と付き合ってもらえることになったらしい」


依ちゃんは達郎にそう説明してくれた。