こうなる事は覚悟していたつもりだったのに…。「淋しい」と口にしたらいけないのは分かってる。佐久間の邪魔はしたくない。それでも、綺麗な女優と笑って並ぶ姿に嫉妬したり、独りが淋しい事を抱え込んでいる自分が やっぱり辛いのだ…。
駅前の公園のベンチに座り、いつものコーヒーを飲む。佐久間のポスターを眺めながら…。

紗織:『…ここで…告白されたんだっけ』

独り言が春の風に舞った。揺れる桜が、より淋しさを誘った気がする。
「倉橋」と声を掛けられ、振り返ると矢嶋が立っていた。