長い階段を上る。
…長いな。神社だからしょうがないけど。

それにしても、木がちょうど太陽の暑さを影で隠してくれて、涼しい…。
なんだか、ずっとここにいたい。

初めて入る場所なのに、ドキドキもワクワクもなく、家でいるよりも安心感があった。

『ビュゥゥ…』

「きゃっ…」

すると、とても強い風が吹いた。
その風は何かとても不思議で、不気味で、私は思わず身震いをした。

なんだろ…風が生暖かい。さっきは気持ちいい風だったのに、今は気持ちが悪い。

『…………ぃけ…』

「………え?」

今、声が聞こえたような…

私は周囲を見渡す。
隣にも、前にも後ろにも誰もいない。

「やっぱり、聞き間違い…?」

私は階段を少し駆け足で登ろうとした。
すると、

『聞き間違いではない』

次は、はっきり聞こえた。
頭の中に直接聞こえたような、変な感じ。

私は怖くなって、周囲を見渡した。

「誰?誰なの?!いるなら姿を見せて!」

「ここだ」

すると、声は上から聞こえてきて、豪華な和服を着た男の人が、おかしな事に宙に浮いていた。
しかも、狐のような尻尾がついていて、フワフワと後ろからこちらをのぞいていた。

「え、………宙、浮いて…?!」

私は驚きであまり声が出なかったが、男はそんなの気にしていなかった。
けれど、私の顔をちゃんと見た時の男の表情は驚きを隠せないような顔をしていた。
けれどすぐにその顔を直して、こう続けた。

「ここは人間の娘が来る場所ではない。立ち去れ!」

その男が叫び、手を斜めに振り上げた瞬間、もの凄い風が吹き、私の体は飛ばされ、胸元の服が少し破けおばあちゃんからのネックレスが服から出てきた。

地面にたたき落とされた後、階段をゴロゴロ落ちていった私は消えゆく意識の中、あることを思い出していた。