『陽花、これを…』

幼い頃におばあちゃんから貰った首飾り。

『つけてなさい。貴方は月上家の跡取りなのだから…』

丸く光る首飾りの宝石の中に、二つの月。
その言葉を最後におばあちゃんは亡くなった。


~数年後~


「散歩してくる」

黒いワンピースに黒いソックス。
ワンピースの下におばあちゃんから貰ったネックレスをつけて、私は玄関へ向かった。

「暗くなる前に帰ってくるのよ」

日差しの眩しい町を歩き出す。
車もあまり通らない、のんびりとした田舎を学生がいない時に散歩すること。これが密かに好きだったりする。

母は、週に1度しか学校へ行かない私を叱らずにいてくれる。
けれど自分がだんだん駄目になるにつれ、とてもとても死にたくなる。
…と、鬱になってる場合じゃないや。

今日はあそこに行くんだから。