アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「え……?
 来る!?」

 梨花の話を聞いていた遥人がらしくもなく、声を上げた。

 来る?
 何処に?

「来てるって、何処に?」

 もしかして、此処に!?

 話しながら遥人が、窓辺に行き、下を見ようとして戻ってくる。

 どうも下でもないようだった。

 ま、まずい……。

「ああいや、もう出かけようと思って支度してたから」

 下りると遥人は言ったようだったが、その瞬間、チャイムが鳴った。

 まずいーっ。

 梨花は待てない性格なのか、チャイムを連打し始める。

「わかったっ。
 今、開けるっ」

 そう叫び返しながら、遥人は、ちらとこちらを見て、玄関に行く。

 何処に隠れよう、と迷う。

 トイレ。
 入るかも。

 お風呂。
 入るかも。

 寝室。
 入るだろうな……。

 迷ってとりあえず、物陰に潜んだ。

 梨花の連打に堪え兼ね、遥人がドアを開けてしまったからだ。