アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「ちょっと行けるかどうかわからないから、また連絡する」

 目を閉じると、少し甲高い女の声が聞こえた気がした。

 まあ、思い込みによる幻聴かもな、と思いながら、でも、かけてきた相手は、梨花で間違いないだろうと思っていた。

 携帯を切って、こちらに戻ってきた遥人に言う。

「行かないんですか?」

 遥人は珍しく困った顔をした。

「……また浮気されちゃいますよ」

 少しだけ笑うと、そっと囁くように言ってみた。

 遥人は部屋の時計を見上げ、
「もう寝ようと思ってたのにな。
 まったく気まぐれだから」
と溜息をついている。

「じゃあ、お前、泊まって帰れ」
と言われたので、

「嫌ですよ」
と言う。

「なんで私がひとりで此処で寝なきゃいけないんですか」

 遥人が居ないのに、遥人の部屋でひとりで寝るなんて、そんな寂しい話もない。

「帰ります」
と言ったが、遥人は何故か、

「いや、此処に居ろ」
と言う。