アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 亮太から警告は受けたものの、結局、那智は、そのまま、毎晩、遥人を寝かしつけていた。

「で? 今夜は、なにを語ってくれるんだ?
 この出来損ないのシェヘラザードは」

 膝の上に寝ている遥人が言う。

 今日は、遥人の部屋のソファで寝ていた。

 テレビからは、那智がつけたお笑い番組が流れている。

「え~。
 いい加減、ネタ尽きてきたんですけどね。

 ああでも、ネタが尽きたとか言ったら、殺されるんですよね、シェヘラザードって」

「ネタが尽きたとか、そんな軽い話だったか? アラビアンナイト」

「えー、じゃあ、さっきのお笑いのネタを」
とテレビの方を窺いながら言うと、違うだろ、とそこにあったスポーツ雑誌ではたかれる。

「いたた……」

 そう頭を押さえたとき、携帯の呼び出し音が聞こえた。

 目を閉じかけていた遥人が立ち上がる。

 遥人は、ダイニングテーブルの上に投げていたそれを見ていたが、何故か、すぐには出なかった。

「もしもし」
と言いながら、キッチンの方に歩いて行ってしまう。

 なんだろう。
 そんな遥人の様子を見ていると、無性に落ち着かない気分になる。