アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「そういえば、お前がいつか、夜の街をすごい男前と手をつないで歩いてたって情報があるんだが。

 あれって専務じゃないよな」

 会社の人間が見たのだから、専務だったらそう言うはずだ、と言う。

 手をつないで?
 記憶にないが、と思ったが、そういえば、一度、無理やりつながれた覚えがある。

 桜田だ。

「呑み会の帰りとかじゃない?

 酔った誰かじゃないの?
 あんたが酔ったら勝手に腰に手を回してくるみたいに。

 男の人って、酔うと、ボディタッチが多くなるからね」

「お前、俺がだれかれ構わず、酔ったら触るみたいなこと言うなよ」

 意外に品良くナイフとフォークを使いながら、亮太がそう文句を言ってきた。

「俺だって、触る相手は選んでる」
と言うので、

「へえ。
 そうなんだ?

 でも、私は好みじゃないんじゃなかったの?」
と笑って言うと、

「言ったろ。
 お前は、一応、いい女の部類だから」

 そう素っ気なく言い、そのあとはもう、普段通りのしょうもない話しかしなかった。