アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「別に専務のことなんか好きじゃないわよ」
と赤くなって言ってみたが、はいはい、と流される。

「それに、私が専務を好きでも、好きじゃなくても。
 私には、今の専務は突き放せない」

 亮太は、そう言ったこちらの表情を窺いながら、
「非常に嫌な予感がするぞ、那智。
 お前、俺の好みじゃないが、俺と付き合ってみるか」
と言ってきた。

「なんでよ。
 っていうか、そんな言い方で、はい、そうですかって言う女が居ると思ってるの?」

「他に言いようがねえよ。
 本当にただ、なんか……嫌な予感がするから。

 それだけなんだ」
とそこで亮太は真面目な顔をする。

 そのまま沈黙する亮太に、ちょっとだけ笑って見せ、言った。

「亮太って、そういう顔してると、格好いいのね」

「なんだ。
 今まで知らなかったのか」
と言ってくるので、

「いや、だから、好みの問題でしょ」
と言ってやった。

「一番高いの、奢らせてやればよかった……」
と呟き、庭を見る横顔に笑う。

 ランチが運ばれてきて、予想以上に美味しそうなそれに浮かれていると、亮太が言った。