アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「そんないい話じゃねえよ。
 梨花に今更、未練もねえし。

 ただ……」
と亮太は視線を木のテーブルに落とす。

「どうも釈然としないんだよな。
 俺みたいな男ならともかく、専務ほどの人がなんで、梨花みたいな女に引っかかったのかなって」

「意外と、あんたの中の専務の評価高いわね」
と感心したように言うと、

「いや、待て。
 大抵の人間の中で、あの人の評価は高いぞ」

 なんで、お前だけ低いんだ、と言われたので、少し考える。

 まあ、格好いいし、仕事もできるし。
 他人に厳しいかもしれないけど、自分にも厳しくて。

 でも――。

「なんかこう、しょうのない人って感じの人だから」
と言うと、亮太は吹き出したあとで、

「あーあ」
と言う。

「あーあってなによ」

 そう上目遣いに見ると、
「もうなにを言っても無駄かなって思っただけだ」
と亮太は言った。

「女がそういうことを言うときって、大抵、もう惚れてるときだからな」