アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 亮太はそれには構わず、ウェイターを呼び止め、
「Aランチで」
と言う。

「お前は?」
と振り向かれ、

「あ、私も」
と深く考えずに答えていた。

 ウェイターが去ったあと、まだそちらを見ながら亮太は言う。

「あいつ、テニスやってたんだよ」

 それでだ、と。

 なるほど。
 亮太はその世界では、なかなか有名な選手だったらしい。

 人気のアマチュアテニスプレーヤー、しかもイケメン。

 確かに梨花が好みそうなキャラだ、と妙に納得する。

「なんで別れやがったんだって目で見たな、今」
と睨まれ、いやいや、と苦笑いしたが、本当にそう思っていた。

 遥人の苦悩に少なからず、梨花と付き合っていることが関係している気がしていたからだ。

「確かに、梨花は扱いづらい女だったが、俺はあんな感じの美人が大好きだ」

 なんの宣言だ、と思っていると、
「捨てられた俺を哀れに思うのなら、そんな女を紹介しろ。
 今朝の礼に」
と言われたので、慌てて考えてみたが、そんな人間、一人しか思い浮かばなかった。

「う……、うちのお母さんとか」

「幾つだ、こら」
とまた睨まれる。