アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 中に入ると、窓際の席に案内され、どっしりとしたメニューを渡されたが、厚みがあるのは表紙で、メニューの数自体は、そんなに選べない感じだった。

 料理に対する自信が窺われて、また値段が心配になったが、ランチはそう高くは設定していないようだった。

「亮太、此処、よく来るの?」

 ちょっと亮太が来そうな店には思えない。

 呑み会のときも、安くて量が呑めればいいとか言って、桃子たちに文句を言われていたし。

 亮太はメニューを見ながら、
「いや、一、二度かな」
と言った。

「前の彼女に連れられてきた。
 払ったのは俺だが」

 その渋い表情に思わず、笑ってしまう。

「あいつ、お嬢様だったからな。
 当時は、俺もまだ学生だったから、あいつと付き合うの、大変だったよ」

 亮太の好みの芸能人は、気の強そうな美人ばかりだ。

 そんな感じの彼女に振り回されている亮太を想像して、また笑ってしまった。

「なんだ?」
と亮太がメニューから目を上げて言うので、

「いや、なんでも」
と誤魔化したが、なにを考えていたのか見てとられたようだった。

 亮太は、ひとつ溜息をついたあとで言った。

「川村梨花だよ」

「え?」

「川村梨花だ。
 俺の前の彼女」

 思わず、メニューを落としていた。