アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 那智が待ち合わせた駐車場に行くと、既に亮太は車に乗っていた。

「遅せえよ、早く乗れ」
と身を乗り出して、助手席のドアを開けてくれる。

 他のランチ組と出くわしたので、笑って頭を下げる。

 物言いたげな顔をして、頭を下げ返してきた。

 車に乗ると、亮太が、
「ほらな。
 早くしねえと。

 いっぱい見つかるんだよ」
と言ってくる。

 車はすぐに発進した。

「平気だよ。
 みんなで行くと思うよ」

「呑気だな」
と言った亮太は珍しく沈黙する。

 前を見たまま、真面目な顔をしているので、どうした? と思い、ちょっと黙っていたが、やはり沈黙に耐え切れず、
「ねえ、なにか話があるんじゃないの?」
と訊いてみた。

「ちょっと待て。
 着くまでに、何処まで話すか、頭整理するから」

 わかった、と那智は黙る。

 亮太の口から、頭整理するとかいう言葉が出るのが珍しいな、と思いながら。

 沈黙を持て余した那智は、外を見る。

 のどかな昼の日差しを浴びた街が目に入った。

 こんな日は、このまま外でぼんやりしてたいよなー。