アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「まあ、そうだけど。
 俺はもうちょっと如何にも、女って感じの方がタイプだなー」

「ええーっ。
 気がないんなら、僕も一緒に連れてってくださいよー」

 駄目、と言うと、
「やっぱり気があるんじゃないですか」
と言ってくるので、

「他のときならいいけど、今日は駄目だ。
 那智に話があるんだよ」
と言ったあとで、手を止め、椅子にすがる。

 ぎしり、と重い筋肉質な身体を受け止め、椅子が音を立てる。

「あー、目が疲れた。
 続き、お前、打ってくれよ」

「もう~、これだから、体育会系の人は。
 どうして、その根性をこういう方面には向けられないんですかね」
と言ってくる。

「ちょいちょい嫌味言うな、お前も」

 また、あーあ、と伸びをした。

「何処まで話すかなあ……」
と呟く。

 那智は専務が好きなのだろうか。

 一体、どういう付き合いなのかよくわからないが。

 恋人同士なのかと思ったが、那智の態度を見ていると、そういう風には見えない。

 だが、専務があのとき、ドーナツ屋の外から、自分に向けてきた視線はかなり攻撃的だった。

 少し高くなっているガラス張りのドーナツ屋を下から睨み上げてくるような。