アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




「……疲れた、朝から」

 那智が会社の中庭にある自動販売機で砂糖のたっぷり入ったミルクコーヒーを買っていると、
「俺はそっちの栄養ドリンクな」
と声がする。

 見ると、亮太だった。

 はいはい、亮太様、と呟きながらお金を入れると、亮太は自分でボタンを押していた。

「今日はありがとう。
 助かった。

 お昼は……」

「まさか、社食ですまそうとか思ってないよな?」

 先を読んだように言われ、はは、まさか、と笑う。

「桃子と一緒に奢るよ。
 なにが食べたい?」
と訊いたら、

「桃子は外せ。
 ちょっと話がある」
と言ってきた。

 亮太にしては、真面目な口調だった。

「なんだかわかんないけど、わかった」
と言うと、ようやく少し笑い、

「なんだかわかんないけどってなんだ。
 お前、その思ってること、全部口から出すのやめろよ」
と言う。

 そのとき、
「お礼なら、俺が奢ろう」
と言う声がした。

 遥人が立っていた。