「専務っ。
専務、専務っ!
遅刻ですっ」
朝、那智は遥人の部屋に飛び込んだ。
外はもう、ぞっとするくらい明るい。
遥人はベッドに腰掛け、携帯で時間を確認しているところだった。
この部屋には時計もないからだろう。
「……わかってる」
と言う遥人に、
「なに落ち着いてるんですかっ」
と言うと、
「いや、焦ってもあまり事態は変わらないかなと」
と言ってくる。
「ええーっ。
遅刻したら、せめて、焦るくらいの誠意は見せましょうよっ」
それ、誠意か? と眉をひそめた遥人に、はた、と気づいた。
そうだ。
この人は、遅刻した人間を断罪する側の人間だったと。
「うう、そうか。
専務は重役だから、重役出勤でいいんですよね〜っ」
だが、遥人は、
「偏見だ。
上の人間ほど早く来てるだろうが」
と言う。
そ、そういえば、そうかも。
より足許をすくわれそうな世界だから、みな、生活態度には気をつけているようだった。



