アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




「もう一回くらい訊いてくれてもいいのに〜」

 つい、そう愚痴りながら、那智はベッドに入った。

 だが、もし、遥人が本当にしてくれると言っても、断るだろうな、と思っていた。

 あの亮太の言葉が頭に残っていたからだ。

『ともかく、専務はやめとけ。
 お前、泣くことになるぞ』

 那智は布団にもぐる。

 専務のことなんて、別に好きじゃないし。

 でも、
『膝枕してやろうか?』
 そう言ってくれた遥人の声にも表情にも、どきりとしてしまったのは事実だ。

 いやいやいやっ。
 本当に、好きじゃないしっ。

 そう思いながら、強く目を閉じる。

 寝られないかと思ったが、すぐに眠れた。

 あの部屋に人が居るのを感じるからか。

 そこに居るのが遥人だからか。

 久しぶりに、この家でゆっくり眠れた気がした。

 いや、お前はいつも寝てるだろ、と遥人に突っ込まれそうだったが。