アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜





「この部屋を使ってください。
 今、シーツとか敷きますから」

 そう言い、那智は南側の部屋のひとつを見せた。

 ベッドの上も綺麗に片付けられ、物もなにもない。

「まるで、囚人の部屋のようになにもないな」
「……他に例えようはなかったんですか」

 だが、確かに、そのくらいあっさりした部屋だ。

「お前の部屋でもいいんだぞ」

「あ、もしかして、見てみたいんですか?」
と笑うと、

「そうだな」
と言う。

 ど、どうして、この人は、照れもせずにこういうことを言うんだろうな。

 私ひとりが赤くなったりして、莫迦みたいじゃないか、と思いながら、
「じゃあ、あとで部屋はお見せしますよ。
 寝るのは此処にしてください」
と言うと、

「何故だ?」
と言う。

 那智は長い間、人気がなかったせいか、妙に寒々しく見えるその部屋を見ながら、

「この部屋に……誰か居て欲しかったんです」

 そう小さく呟いた。