アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「そんな洒落たドリップケトル買っておいてか」

「ああ。
 これ、気に入ってるんですよ。

 お店のみたいでしょ?

 アラジンと魔法のランプのランプみたいなケトル」

 シルバーの口が細くて曲がったやつだ。

 よく見るタイプだが、もちろん、インスタントが多い自分が買ってきたものではない。

「これは、さ……」

「さ?」

「……お母さんが買ってきたんです」

「今、『さ』の入る位置がおかしくなかったか?」

 細かい男だ。

 私なら、すぐに離婚する、と思いながら、カップにインスタントの粉を入れた。

 買ってきたのは、桜田だ。

 あの人、雑そうに見えて、変なところにこだわるからな。

 っていうか、うちに置いておくなんて、居座る気満々だな、と思っていた。

 残念ながら、自分にそれを拒否する権利はないのだが。

「はい、専務。
 座って座って」
とお盆に珈琲を載せて、遥人をソファへと追いやる。