アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「いいじゃないですか、別に。
 健全でしょ」
と言いながら、那智はドーナツの残りを割って口にした。

「もう出ませんか?
 また、誰か来るかもしれませんから。

 これ、専務の割り当てです」
と割った残りを渡すと、割り当てってなんだ、という顔をしながらも、食べてくれた。

 確かに、こういうところだけ、端から見ていれば、カップルのように見えなくもないかもしれないな、と思った。

「すみません。
 飲み物はないんですよ。

 さっき、亮太に飲まれちゃって」

 珈琲でも買ってきましょうか、と言うと、いい、と言う。

 立ち上がって、お盆を片付けてくれようとする遥人に言った。

「あの、今日はうちにいらっしゃいませんか?」
と言うと、遥人は、どうした、と驚いた顔をする。

「いえ、たまにはどうかな、と思って」

「寝たら俺は帰らないぞ」

「いいですよ。
 部屋、幾つか空いてるんで」

「……普通の女なら、誘ってるんだろうが、お前は違うな」
と言われ、
「はい」
と答える。