アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 あんな高級マンションに一人暮らしなのか。
 ミラーに入った那智のマンションをちらと見ながら遥人は思った。

 家族はもう居ない風だったが、そのわりに陰がないな。

 昨夜、那智が話してくれた話はひとつだけだった。

 何故、ベルマーク委員長になったのか。

 だが、そうそうに寝てしまったから、結局、オチを聞きそびれていた。

 まさしく、千夜一夜物語だ。

 話が佳境に入ると、シェヘラザードは、
「じゃあ、続きは、また明日」
と言ったらしいのだが。

 いや、俺なら、そんなこと言いやがった時点で斬り殺すが、王は結構心が広かったんだな。

 まあ、脅したら話すような女でもなかったのだろうから。

 続きが聞きたければ静かにまた夜が来るのを待つしかなかったのだろう。

 自分の代金が一万円では安いと那智は言った。

 いや、待て。
 シェヘラザードは夜伽を終えたあとに語っていたはずだが、お前は、なんにもなしに一万円だぞ。

 その辺の芸人が話すのより高いじゃないか、と思ったのだが、案の定、那智はコンビニの袋にお釣りを入れていた。