手を放した遥人は、床に手をつくと、身を乗り出してきた。

 そのまま、口づける。

 しばらくして離れた彼は言った。

「那智。
 その……この部屋は出ないか?」

「なんでですか?」

 遥人は、ちら、と那智の後ろを見、
「お前の父親に見張られてるみたいだからだ」
と言った。

 この大量のぬいぐるみは、このときのためだったのかな、と思いながら、那智は笑い、
「いいですよ」
と言った。