アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「入ったらどうですか?」
と腰に手をやり、那智は言った。

 後ろをついて来ながら、遥人は言った。

「桜田さんはお前の実の父親だったんだな」

 那智は振り返らずに言う。

「表向きは違いますけどね。
 私は母方の祖母の戸籍に入れられているので」

 ま、犯罪ですからね、と言いながら、那智は今まで自分が居た寝室を開けて見せた。

 ベッドからはみ出し、部屋を埋め尽くすぬいぐるみに遥人は圧倒されたようだった。

「これ、全部、桜田さんからのプレゼントです。
 私が生まれたとき、中学生だった彼は、どうしていいかわからずに、おっかなびっくり、ぬいぐるみを運んできてくれてました。

 まるで、親鳥が餌をやるように。

 ともかく、大きければいいと思ってたみたいで、この有様です」
と巨大ぬいぐるみの山に苦笑する。

「でも、自分が大きくなるに連れて、そんな『お父さん』の必死さがよく伝わってきて。

 そんなに年の離れていないあの父親を私は、より好きになりました。

 最初の頃、専務に言ったじゃないですか。

 私の初恋はお父さんだって。

 ああ見えて、昔は格好よかったんですよって」

「……ああ見えても、こう見えても、今でも相当格好いいぞ」