アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 そのとき、誰かがチャイムを鳴らした。

 しばらく出ないでいたが、那智はぬいぐるみの群れから、むっくり起き上がり、インターフォンへと向かう。

「『勝手に開けて入れ』って、貴方、よく私には言いますよね」

 そう言ってやると、遥人はようやく、ああ、と気づいたように、鍵を探し始めた。

 どうやら、鍵を持っていることを忘れていたらしい。

 まあ、覚えていたとしても、彼の性格からして、鳴らしたことだろうが。

 すぐに見つからなかったらしい遥人に苦笑し、

 やはり似ている。

 肝心なところで、ちょっと抜けてるところが……と思っていた。

 つい、手を貸したくなるのだ。

 そして、いつの間にか、見捨てられなくなる。

 ドアを開けた遥人は、那智の顔を見た途端、なにを言おうとしたのか忘れたように戸惑う。

「那智……」
「はい」

「……ありがとう」
「いえ」
と那智は言った。

「情けない王様を助けるのは私の役目ですから」
と言ってやると、誰が情けないだ、と言い返そうとしたようだが、遥人は、その言葉を途中で引っ込めてしまう。