アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「さっき、お前に手を貸す代わりに、那智を幸せにしろと言わなかったか。
 今すぐ、那智を追え。

 文句は言わせないぞ。
 俺にはお前を殴る権利がある。

 俺は那智の父親だからな」

「……知っています」

「俺は――
 那智の実の父親だから」

 ……は?

「俺は那智の血のつながった父親だ。
 ほら、早く行けっ。

 俺が今、どんな思いで言ってると思ってるんだ~っ。
 お前も娘を持てばわかるっ」

 はーやーくー行けーっ、と呪いの言葉のように言う桜田を、政臣が笑って見ている。

 押されるように歩き出しながらも、遥人は振り返り訊いた。

「ちょっと待てっ。
 あんた、幾つだっ」

「三十八だ、いいから行けっ」

 那智は幾つのときの子だ!?

 行〜け〜っ、という娘を嫁に出す前の父親の怨念の声のようなものに押されながら、遥人は式場を後にした。