アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 家に行く前、遥人はコンビニに寄ってくれた。

「適当に二人分買って来い」
と言うので、

「はいっ」
と言って駆け出しかけると、肩をつかまれる。

 うわっ、とよろけてまた、助手席に腰を落とすと、
「持ってけ」
と一万円渡してくるので、

「朝ご飯一万もしませんし、乗せてっていただくんですから、私が奢りますっ」
と宣言したのだが、遥人は、

「じゃあ、この一万円はお前の代金だ」
と言ってきた。

 いや、待て。
 朝ご飯代にしては、高過ぎだが、私の代金にしては――。

「……安いですね」

 その一万円札を見ながら呟くと、
「いいから行けっ」
と車から叩き出された。

 本当に、家でも職場でもやさしくない人だ、と思いながら、店に入る。

 すぐに戻った那智は、時間がないので、遥人のおむすびを横でむいてあげようとしたのだが、うまくいかない。

「ああ、海苔が……

 ああっ、中身が」

 遥人が前を見て運転しながら、言ってくる。

「……さっきから、ロクでもない言葉ばかり聞こえてくるが、大丈夫か」