アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「……遥人」

 政臣を見下ろすと、彼は車椅子の肘掛に頬杖をついたまま言った。

「お前はやはり、わしに似てるな」

「え……」

「面食いだ」

 那智が吹き出す。

「お前の母親も初めて会ったときから、目を見張るくらい美しかった。

 そして、このお嬢さんのように姿勢が良くて、いつも透徹とした瞳でわしを見ていた。

 なにか今までの生き様すべてを見透かされているようで、わしは生まれて初めて、人の前に立って恥ずかしいと思ったよ」

 那智と母は似ている、か。

 遥人は溜息をついて言った。

「似ているようで、似てないですよ。
 母はこんなことが出来るような女じゃなかった。

 わかっています。
 母が莫迦な女だっただけだ」

 遥人は那智を振り向いて言った。

「お前なら、男に捨てられ、路頭に迷っても、ああはならなかっただろう」

「そんなことはありません。
 いろいろとおありだったんでしょう。

 専務のお母様ですから、聡明な方だったはずです。
 子を見れば、その親がわかりますから」