アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 政臣はまっすぐに自分を見つめてくる。

「早く殺れ。
 今はこうして座っているのもしんどいんだ」

 額に銃を当てられたまま、政臣は喋り続ける。

 こんなことが昔にもあった、と遥人は思った。

『お父さん、驚いた?』

 母に買ってもらったオモチャの銃を政臣の額に当てて、無邪気に遥人は笑っていた。

 この人が本当の父親ではないなんて、知らないままに。

 政臣は、以前にも、表に出て来ない時期があった。

 病気のためと言っていたが、それは違う。

 梨花の父たちが、会長の不在を知られたくなくて、彼を病気に仕立て上げたのだ。

 政臣は家を出て、遥人の母親と暮らしていた。

「……あんたさえ、あんたさえ、出ていかなければ。

 母はあんな風に身を落として生きていかなくても。

 あんな風に殺されなくても済んだのにっ」

 子供の自分にはなにがあったのかよくわからなかったのだが。

 母は、元々は政臣の会社で働いていたようだった。