遥人は支度を済ませ、誰も居ない廊下を歩いて、式場に行った。
式場の前に出ている案内の看板にはまだ名前は入れられていなかった。
扉を押して中に入ると、中は綺麗にセッティングされている。
梨花がこだわった花やテーブルコーディネートが目に入った。
中央奥には、細長いガラスケースに入った大きな竹の飾りが華やかに活けられている。
遥人は用心深く奥へと進んでいった。
すると、なにかが軋む音がした。
奥から誰かが現れる。
キイキイと軋む音。
ゆっくりと、ひな壇の横に、その車椅子は現れた。
眼光鋭い老人が自分を見上げていた。
夢にまで見た相手が、そこに居る。
梨花の祖父、滅多に表に出て来ない前会長、川村政臣(まさおみ)だ。
「梨花は来ない」
と彼は病が悪化しているというわりには、腹に響く、力のある声で言った。
そして、自分を見上げて言う。
「遥人、わしを殺せ」
そのために此処まで来たんだろう――。
そう、政臣は言った。



