アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 遥人の手が背中に触れ、抱き寄せてくる。

 私なんかでは、きっと、この人は止められない。

 それでも、今、此処でこうしていることだけは後悔したくない。

 だが、遥人にはああ言ったが、正直、遥人が居なくなったあとの、自分の姿がまったく想像できないでいた。

「……千夜のような一夜か」
と遥人は呟く。

「俺にとって、ずっと、夢のような一夜は、復讐を成し遂げたときに来るんだと思っていた」

 遥人は強く腕に力を込めたあとで、少し起き上がると、身を屈め、うつむいていた那智に口づけてきた。

 那智は目を開け言った。

「やっぱり、なにか話しましょうか?」

「……そうだな。
 わかった」

 そう言ったあとで、遥人はいつもの口調で言う。

「じゃあ、俺が寝るまで話し続けろ。
 先に寝たら、どうなるのかわかってるんだろうな」

「ええ~?」
と眉をひそめたあとで、那智は軽く咳払いして言った。

「え~、では、私のしょうもないお話を――」

「お前にしょうもない話以外のものがあるのか」
とそこにあった那智のカピバラのぬいぐるみで、軽くはたかれる。