うとうとと、少し夢を見ていた。
狭いながらも小さな我が家で暮らし、長男の担任の可愛らしい先生に、
『素敵な旦那様ですねー』
とうらやましがられる。
自分は振り返り、仕事を抜けて参観日に来ていたスーツ姿の遥人を振り返るのだ。
泣いて目を覚ますと、寝室にあるスタンドのあの暖かいオレンジの光の中で、遥人が自分を見ていた。
「……悪い夢か?」
と訊いてくる。
いいえ、と言い、那智は遥人の胸にすがった。
いつもより強く体温を感じる。
じかに肌が触れ合っているせいだ。
ありえない幸せな夢を見ても、人は泣きたくなるのだと初めて知った。
「子供の頃、学校の図書室の絵本で、初めてアラビアンナイトを見ました。
深く青い色の装丁で、とても綺麗だった。
そのとき、タイトルの千夜一夜物語っていうのを見て、私、千夜のような一夜の話だと思ったんです」
日本では、千夜一夜と訳されているが、原題は「千一夜物語」。
諸説あるが、『多くの物語』という意味の比喩として、千一、という数字が使われているという。
アラビアンナイトは、たくさんの夜の物語。
だが、子供だった那智は、千夜のような一夜の物語だと思った。
「千夜のような一夜って、きっと、今夜のことです」
那智はそのまま目を閉じた。



