アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「荷物」
「……はい」

「なにか欲しいものがあったら持っていけ」

「いりません。
 なにか持って帰っていいのなら、遥人さんを持って帰ります」

「……重いぞ」
と遥人は那智の頰に触れて笑う。

「引きずって持って帰ります。
 タクシーの運転手さんは、重いものは抱えて、トランクに入れてくれるし」

「俺は死体か」

 そう笑ったあとで、そっと口づけてきた。

 那智の瞳を見つめたまま、
「今日はもう帰れ、那智」
と言ってくる。

「帰りません。
 だって、今日帰れって……明日がないのに?」

 遥人は那智の唇に人差し指を当てて言った。

「今日はなにも語っていらない。
 帰れ、シェヘラザード」

「嫌ですよ。
 帰ったら、王様が死ぬから」

 そう言ったあとで、気づく。

「シェヘラザードは途中からは王を見張っていたのかもしれませんね」

「見張る?」

「王が途中から改心していたのなら、自分の罪を悔いて死んでしまうかもしれないから。

 だから、シェヘラザードは王に子供を与えたんですよ。

 子供可愛さにこの世にとどまるように」