アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 なるほど、いい人生かもしれない。

 亮太は意外といいパパ、いいおじいちゃん、いい夫になりそうだし。

 だが……。

 縁側で二人でお茶をと言われたとき、自分の妄想の中で、横に居たのは、品よく年をとった遥人だった。

 そこで、がっくりと項垂れてしまった那智に、亮太は言う。

「まあ、いきなりは無理だろ。
 梨花とずいぶん前に別れてた俺と違って、お前はまだ、今、別れたばっかりだからな」

 別れてないよ~っ。
 付き合ってもないから~っという反論はむなしいので、もうしたくなかった。

「ゆっくり考えろ。
 時間はいくらでもある。

 今日は奢ってやるから。
 そうだ。

 ゲーセンにでも行くか。
 マシンガンぶっ放しに。

 スカッとするぞ~っ」
と亮太らしい慰めを言ってきた。

「……ありがとう、亮太」
と言いながらも、ちら、とホテルの方を見た。

 亮太はその視線を追っただろうが、なにも言わなかった。