アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜




 当たり前だが、その日はやってきた。

 なんでだか、直前にそれが来ても、まだずいぶんと先のことのように感じていたのだが。

 ついに訪れた土曜日。

 遥人の結婚式の前日だ。

 今日は遥人は式の準備で居ない。

 那智は自分の家のリビングで転がり、ぼーっとしていた。

 桜田さんどころか、洋人も、お母さんも来やしない。

 ……まあ、あの人は常日頃から来ないけど。

 友達と遊んでもよかったのだが、なんだか気乗りがしなくて、結局家に居ることにした。

 天井をぼんやり眺めていると、携帯が鳴る。

 専務なわけないしなー。

 ああ、鳴ってる鳴ってる。

 ああ、切れた。

 ……あれ?
 また、鳴ってる。

 なにか急ぎの用だろうか、とのそりと起き上がり、今日は遥人からかかる予定はなかったので、鞄に放り込んだままだった携帯を取り出した。

「……亮太」

 一瞬、出るのやめようかな、と思ったが、出る。

『那智、どっか行かねえか』

 開口一番、亮太はそう言ってきた。

『お前も家に居ても気分が悪いだろ』