アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 翌朝、会社の中庭で自動販売機にお金を入れたまま、大欠伸をしていると、ガシャンッと音がした。

 見ると、勝手に紙パックのヨーグルトドリンクが落ちている。

 後ろから那智越しに、亮太がボタンを押したのだ。

「ああっ。
 珈琲飲もうと思ってたのにっ」

「此処の珈琲、甘々じゃねえか」

 それがいいんじゃない〜っとわめく那智の足許に屈み、ヨーグルトを取った亮太は、
「小銭がないんだ、奢れ」
と言って自分がストローを挿し、それを飲み始める。

「まったくもう〜」
と言いながら、那智はもう百円入れた。

 横目に亮太を見ながら、身体でガードしつつ、ボタンを押していると、
「二本はいらねえよ」
 心配すんな、とすました顔で言ってくる。

「大欠伸してたな。
 なにかお疲れか?」

「あー、カピバラ見てきた。
 可愛かったよー」

 ぷすっ、と勢いつけてストローを挿そうとしたが、先が曲がってしまう。

 どうも、これをやるのが苦手だ、と思っていると、亮太がそれを取り、
「カピバラ?
 誰と見に行ったんだ」
と言いながら、挿してくれる。