アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 はい、と言うと、遥人は言った。

「俺にはわかる。
 王は自分の子供を残したくなかったんだよ。

 だから、一夜を共にするたび、女を斬り殺していたんだ」

 逆上して、妻を殺した。
 罪に汚れた自分の子供を、と遥人は言う。

 那智は手探りで、布団の中の遥人の手をつかんだ。

 遥人がこちらを向く。

 那智は両手で遥人の手を包み、祈るようにおのれの頰にその手を当てた。

「離れても、ずっと願ってますよ。
 斬り殺されても、願ってるかも」

 いつも私は願ってる。

 どうか今夜、貴方が眠れますようにと――。

 那智……と囁くように呼んで、遥人が自分を見つめる。