アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 いつの間にか、布団が元に戻してあった。

 衝立もない。

「お前がうるさいから」
と遥人は機嫌悪く言う。

「いや、いいですよ。
 ちょっと寂しいかな、と思っただけで」

 専務ともうちょっと話してから寝たかっただけです、と言うと、遥人は、諦めたように溜息をつき、
「俺もだ」
と言った。

 結局、いつものように、並んで寝ることになった。
 布団は別だが。

 同じ布団より、こうして、人に敷いてもらった布団が並べてある方が、人に夫婦って見られてるみたいで、ちょっと嬉しいな、と那智は思った。

「なに笑ってんだ?」

 こちらを見て隣の布団の遥人が言う。

 いえ、と言ったあとで、
「あ、そうだ。
 さっき思ったんですけど。

 宴会で隣の上司に酒を強要される話。

 今は、専務の上はもう社長しか居ませんよね。

 そういう意味ではいいですよね。
 お酒勧められなくて」
と言うと、遥人は、莫迦言え、と言う。

「年下がこんなポジションに居るんだぞ。
 どれだけ俺が気を使ってることか」

「……あまりそのようには見えませんが」

 生まれつき人の上に立つと定められていた人のように、堂々としている。