アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「いや、式を目前にして、酒も入ってるし。
 さすがの俺も今は、ちょっと平常な状態じゃないから」

 いや、その淡々とした口調と顔で言われても、実感が湧きませんが、と思いながらも、

「わかりましたよ……」
と言う。

 だが、これだと余計寂しい感じがしてしまう。

「いっそ、別の部屋にしてくれればよかったのに」

 ぼそりとそうもらしてしまった。

 はっ。
 今の、嫌味に取られたかな。

 ちょっと怖い、と遥人の顔を見ないようにして、
「トイレ行ってきますーっ」
とその場を去る。

 でもこれがまた……。

「トイレも怖いんだけど」
と中で呟いた。

 壁などは古いのだが、トイレ自体は最新式だ。

 ただ、何故、こんな広さが必要なんだ、と思うくらい広い。

 昔はともかく、広ければ豪華という認識だったのか。

 霊が三十体くらい詰め込めそうなくらい。

 普通の一部屋分くらいの広さがあった。

 しかも、便座に腰かけると、地元の詩人の詩が飾ってあるのが、目に入るのだが、これに書いてある文言が何気に怖い。

 落ち着かなくて、慌てて出た。

「あれっ?」