アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 


 ともかくやたらめったら広い部屋だ。

 そして、古くて重厚な感じがする。

 ラウンジから戻った那智は、戸口で改めて部屋を眺め、呟いた。

「……なんか出そうな気がします」

 後ろに立つ遥人が言う。

「大丈夫だ。
 お前、今までの人生で霊を見たことがあるのか。

 例え、この部屋に、大正時代の霊の二体や三体居るとしても、お前のような繊細さに欠ける人間に見えることはない」

「居るんですかっ!?」
と振り返り、遥人の浴衣の胸許をつかんで訊く。

 遥人は溜息をつき、その手を外させる。

「物の例えだ」
と言いながら、先に部屋へと上がっていってしまう。

 いや……リアルすぎるんですけど。

 そして、部屋にはもう布団が敷いてあった。

 広い部屋のど真ん中に、ぽつんと二つ、布団が並べてある。

 なにかこれはこれで寂しい感じだ、と思っていると、おもむろに遥人は布団を離し始めた。

 一枚を窓際に。

 一枚を戸口に。

 端と端まで引き離したあとで、部屋の中を見回し、縁側部分に飾ってあった木製の小洒落た衝立を持ってくると、ど真ん中に置いた。

「おやすみ」

「なにやってんですかっ。
 なにやってんですかっ、もうっ。

 それっ、普通、女子がやりませんっ!?」