アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「お母さんと桜田さん見てると思うんです。

 お互い、好きの時期がずれてるなって。

 大事に思ってるのに、それぞれが相手を好きだと思う、ピークの時期がずれてたんです。

 それだけのことなのに。

 こんな風になるんですよね」

 いかん……。
 しんみりしてしまった。

 遥人は、那智の空いたグラスを見、
「もう一杯頼め」
と言ってきた。

「そうですね。
 いただきます」

 温泉は良かったし、お酒は美味しいし。

 なにより、遥人がまだ自分の側に居てくれる。

 こんな気持ちの良い酒なのに、呑まない手はない。

「専務も頼みませんか?」

 あと少しになっている遥人のグラスを見て言うと、
「いや、俺はいい」
と遥人は言った。

「なんですか。
 付き合い悪いですね」
と眉をひそめると、

「お前は忘年会で横に座ってる上司か」

 無理やりや酒を勧めるな、と言ってくる。

「はいはい。
 じゃあ、一人でいただきますよーだ」
と那智はメニューを眺めた。