アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「あの人もときどき、そうして、うざったらしくなるんですよ〜」

「お前、今、遠回しに、俺をうざいと言ったな」

「そうですか?
 すみません。
 酔ってるのでわかりません」
と言いながら、スモークチーズを手に取る。

「都合のいいときだけ酔うな」

 そのセリフを無視して、那智は言った。

「そういえば、桜田さんが言うんですよ。
 お前は、俺に似てるから、辰巳遥人が好きなんだろうって。

 あら、すみません。
 好きとか言っちゃって。

 やっぱり、酔ってますね」
と那智は笑った。

「でも、前も言っちゃいましたよ、確か。
 専務がいつも、なかったことにしてるだけですよね」

 遥人はなにも言い返さず、少し笑って言う。

「……好きな相手が、自分を好きで居てくれるっていうのは、いいもんだな」

「そうでしょう?」

 貴方も私を好きだと言ってますよ、とはからかわずに、那智は笑顔で流した。