アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

 酔ってないから言ってるんですよ、と那智は言った。

 そのとき、テーブルに置いていた携帯が音もなく光った。

「また宣伝だ」
と那智は眉をひそめる。

「何処からもれるのか、迷惑メールがいっぱい来るんですよね。
 そういうのは、鳴らないようにしてるんですけど」

「アドレス変えたらどうだ?」

「またみんなに登録し変えてもらうのが、めんどくさいし、悪いじゃないですか。

 でも、この山のような迷惑メール。

 日によっては、ビタッと止むことがあるんですよ。

 そういうときは、ちょっと心配になりますね。

 どうしたんだろう。
 具合でも悪いのかなって」

「自動で送ってるんだろ? そういうの」

「だから、パソコン動かしてる人が具合が悪いのかなって」

 滝を見ながら、遥人は、ぼそりと言った。

「俺が居なくなっても、お前はせいぜい、迷惑メールの人が居なくなる程度の寂しさしか感じないんだろうな」

「うわ。
 なんですか、その発想。

 専務こそ、酔ってますか?」

 ほんとに桜田さんと似てますね、と那智は言う。