アラビアンナイトの王子様 〜冷酷上司の千夜一夜物語〜

「ちょっと専務には会わせたくないですね〜」

 そこから内緒話をするように、身を乗り出し、
「うちのお母さん、本当に美女なんです」
と囁いた。

「年よりずいぶん若く見えるし。
 桜田さんなんて、今でもメロメロですよ」

「それなのに、なんで別れたんだ」

「桜田さんが浮気したんです」

「……駄目じゃないか」

「そうなんですけど。
 お母さんが、浮気してないにしても、あまりにもチャラチャラしてたから、ちょっと当てつけみたいな感じで。

 そしたら、お母さんの逆鱗に触れちゃって」

「勝手な人だな」
と遥人は眉をひそめる。

「そうなんですよ。
 でも、桜田さんは、そういうのがタイプなんです。

 だから、梨花さんも好みなんだと思うんですよね〜」
と言いながら、氷の上に載った可愛らしい銀色のチョコをつまむ。

「そうか。
 式のあと、引き取ってくれると助かるんだが」

「無理だと思いますよ。
 お母さんが怒るから」

「離婚してるんだろう?」

「そうなんですけど。
 勝手な人なんですよ、ほんと。

 専務並みに」

「……お前、酔ってないわりに言うな」